『55歳からのハローライフ』を読みました。
前々から気になっていたものの、「55歳からハローワークに行くのか…」とただただ勘違いしていた作品でした(笑)まぁ内容としては、ハローライフもハローワークもあんまり変わらないんじゃないかと思います。
というのも、「人生をどうしたいのか?」という視点が必要だからです。
「定年よりもやや早い55歳。人生の一つの節目は、人に人生を考えさせる。」そう感じる素晴らしい作品でした。
こんなこと書いてます
あらすじ
内容紹介
希望は、国ではなく、あなた自身の中で、芽吹きを待っている。
多くの人々が、将来への不安を抱えている。だが、不安から目をそむけず新たな道を探る人々がいる。婚活、再就職、家族の信頼の回復、友情と出会い、ペットへの愛、老いらくの恋…。さまざまな彩りに充ちた「再出発」の物語。最新長編小説。 –このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
出版社からのコメント
人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。「結婚相談所」
生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかも知れない。「空を飛ぶ夢をもう一度」
お前には、会社時代の力関係が染みついてるんだよ。「キャンピングカー」
夫婦だからだ。何十年いっしょに暮らしてると思ってるんだ。「ペットロス」
人を、運ぶ。人を、助けながら、運ぶ。何度も、何度も、そう繰り返した。「トラベルヘルパー」(引用 Amazon『55歳からのハローライフ』)
著者である村上龍さんは、この5つの中編小説は「信頼」を意識して書いたとしていますが、どの話にも共通するのは「信頼」だけではなく、「飲物」もその一つです。各話それぞれに何かしらの飲物が登場し、その飲物が主人公を落ち着かせ、人間関係をよりよいモノへと変えていきます。
また、個人的には55歳からの再出発ということで、過去の振り返りと、過去への執着も共通のテーマのような気がしました。
人生の節目。人は、その節目から未来をどう創造するのか?そのためには、過去とどう決着をつけ、未来への一歩を踏み出すのか?も一つの着眼点なのではないかと思います。
感想
人生って難しいよなーと思わされた作品でした。
どれだけ上手くいっている人生でも、どこでどんな落とし穴に落ちるかはわかりません。それが病気なのか?リストラなのか?離婚なのか?死別なのか?もしかしたら、早期退職や転職がそうさせるかもしれません。何はともあれ、人生最後の最後まで上手くいきっぱなしということはないんだろうと思いました。
もちろん、逆も然り。それまで上手くいっていなかった人生が、突然上手くいき出すなんてこともありますよね。それまで話が噛み合なくて、離婚も考えていた夫婦が、病気や子どもをきっかけに突然生活が変わるなんて事もあるかもしれません。
人生はどうなるかわからない。
だからこそ、「どういった人生を歩みたいのか?」を自ら問い、答えを導き出さないといけないのかもしれません。誰かに委ねる人生もなくはない。でも、それだといつかきっと後悔する。それは『55歳からハローライフ』に出てくる主人公が物語っていることだろうと思います。
ただ、「どういった人生を歩みたいのか?」が決まったところで、その人生なら絶対に後悔しないのか?と問われると、それもまた違うんですよね。それもまた人生の難しいところ。何をしようと、どんな人生を歩もうと、きっと「あぁしておけばよかった…」と後悔はするんですよね(笑)
そして、後悔は選択肢を広げれば広げた分だけ大きくなるのも人生の問題の一つだと思っています。つまり、選択肢が狭ければ、少なければ、後悔はあまりないんですよね。
55歳というと、現代ではまだまだこれからの年齢ですよね。会社を辞めれば年金生活があるし、年金が少なければ再就職もあり、孫ができたり、病気を気にしたりと、いろいろなことが頭をよぎる年齢です。そうやって選択肢というか、考えることが増えるごとに、人は将来が不安になるんだろうと思います。
そんな不安をどう解決するのか?というのが、この物語の中では語られているんじゃないかと思いました。それはつまり夫婦の信頼関係かもしれないし、ペットかもしれない、生きがいを見つけることかもしれない。何が解決するかわからないけど、もし不安ならとにかく足を動かすことが、人生の不安を取り除くことになるんじゃないかと思います。
若者にこそ読んで欲しい一冊
『55歳からのハローライフ』というタイトルなんですが、ぜひ若者にも読んで欲しい、若者にこそ読んで欲しいと思いました。
というのも、若者にとって55歳ってかなり未知の世界なんですよ。僕もそうですが、全然わかりませんし、想像もできません。何が起きるかわからないし、社会がどうなっているのかなんて予測もできない。
まぁそれに備えてではないですが、55歳ってどんな感じなんだろう?ということを感じるためには、いい一冊じゃないかと思います。
あとがき
『55歳からのハローライフ』はじめて村上龍さんの小説として読んだんですが、非常に読み応えがあるいい作品だったと思います。なんとなく村上龍さんの作品は読みにくそうなイメージがあったんですが、そんな感じは一切なく、読みやすく、かつ考えさせられる作品だったと思います。
リアルな55歳。どこにでもいそうな55歳の5人を主人公にした作品は他にないんじゃないかな?と思わせるくらいのリアリティがありました。ファンタジーでも、SFでも、ミステリーでもない、リアルをリアルのままに描いた作品も、珍しくて面白かったです。