【感想/ミステリー】『菩提樹荘の殺人/有栖川有栖』火村英生の大学時代の名推理が読める

有栖川有栖の作品を一度読んでみたくて、手に取った作品はかつて実写ドラマ化されて「臨床犯罪学者 火村英生の推理」の原作でした。(まぁ原作といっても4作品中の2作が映像化されたのかな?)

そのためか、頭の中では火村は斉藤工が、有栖川は窪田正孝がちらつきました。でも、それでもそれほど違和感なく、むしろしっくりき過ぎていて怖かったです(笑)

ミステリー作品の中では比較的安易なトリックや話の作りではありますが、ミステリーを読み慣れていない人にはかなり読みやすく、楽しめる作品ではないかと思います。

簡単なあらすじ

アポロンのように美しい少年、と噂される連続通り魔事件の容疑者。お笑い芸人志望の若者達の悲劇。大学生時代の火村英生の秀逸な推理、そしてアンチエイジングのカリスマ殺人事件。「若さ」を持て余す者、「若さ」を羨望する者達の恩讐に振り回されつつ謎に立ち向かう火村とアリスを描く、美しい本格推理四篇!

(引用 Amazon『菩提樹荘の殺人』)

感想

ミステリーや推理それ自体よりも、話として火村と有栖川のやり取りや核心に迫るまでの流れが面白かったです。

正直読み応えのあるミステリーは他にもたくさんあると思います。単純にミステリーを楽しむのであれば、森博嗣や東野圭吾の方が面白いですし、引き込まれると思います。

でも、有栖川有栖の今作品『菩提樹荘の殺人』を読んで思ったのは、火村英生という犯罪学者と、有栖川有栖という小説家、そして警察というこれまでになかった組み合わせの滑稽さが、有栖川有栖の作品の面白さなんだろうと。大学教授や探偵が警察に依頼されて事件を解決する話は多い中で、そこに小説家という異質な人間を入れることで面白くなるんだということも。

また「若さ」というテーマもよかったと思います。それもただ勢いに任せた「若さ」ではないというのがよかった。若い人を犯人にした犯罪の中には、しっかりと考え込まれ、用意周到な犯罪だったり、「やってしまった…」といういつの間にか殺していた感じの犯罪が多いですが、今作は半分作り込まれていて、半分衝動的という感じの若さという感じがしました。

「若さ」をテーマにした犯罪だからこそ、難しい推理もなく、でも、そこに隠された想いや妬み、恨みは意外と深さが面白さを引き立てたんじゃないかと思います。

実写ドラマを見たからこそ思うこと

僕はこの作品を読む前に、ドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理」を観ていました。なので、読みながら想像の中にでてくるのは斉藤工と窪田正孝なんですよね。

ドラマを観ていたときは、窪田正孝の関西弁の下手さには驚いたんですが、実際原作を読んでみて思うのは、「(作中の)有栖川も意外と変な関西弁だ」ということでした。もっと滑らかな、違和感のない関西弁なのかと思いきや、ぎこちなさというか、いつもは標準語なのに無理矢理関西弁を使っているような気持ち悪さ、違和感を感じましたね(笑)

まぁ窪田正孝演じる有栖川有栖から入ってるからかもしれませんが、でも、気持ち悪かったです。

一方で、火村英生は斉藤工でぴったりでしたね。これもドラマから入ってるからこそなのかもしれませんが、人物像や年齢、しゃべり方や雰囲気を考えると、斉藤工が一番しっくりくる感じがします。

こういう作品に出会うと「あぁやっぱり演技力も大切だけど、それ以上に演じる人も大事なんだなー」と思わされます。年齢や風貌、しゃべり方などを似せることはできても、雰囲気まで似せるとなるとやっぱりそこには人として持ってるものを問われるように感じます。今回でいえば火村英生の異質感、ミステリアス感は、斉藤工にも感じたということなんだと。

ぜひ、「臨床犯罪学者 火村英生の推理」を観て面白かったと思う人には、ドラマ版も観て欲しいですね。もちろん逆も然りです!

あとがき

あらためて『菩提樹荘の殺人』は面白い作品でした。読みやすく、サクサク読めるので読むのが遅い僕にはうれしかったです(笑)

若さって大事だよなーと思いながら、でも間違うと若さって怖いよなーと思う作品でもありました。若気の至りではないですが、若さ故の勢いもコントロールできないなら意味のなさない、むしろ怖い力なんだと。

だからこそ、その若さをコントロールしてきた大人たちが、子どもたちに若さの怖さや重要性を説いていかなければいけなんだろうと思いましたね。