【感想/ブッカー賞】『恥辱(Disgrace)/J・M・クッツェー』人の人生は簡単に暗転するということを思い知らされました

以前、『世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』こちらの作品を読んだときから、J・M・クッツェーという作家が気になっていました。

【感想/文学賞】まだ見ぬ名作を求めて『世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』

たしか、『世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』では、『マイケル・K』と『恥辱』が紹介されていて、どっちを読もうか迷っていました。まぁどっちも読めばいいかと思いながらも、どっちを先に読もうかと考えたあげく、なぜか『恥辱』を選びました。理由は未だに謎です。

ただ、どこかで『恥辱(ちじょく)』という表現が気になったんだと思います。なんででしょうね?わかりません(笑)

タイトル通りの内容ではあったんですが、何よりも人生って深く、難しいなーと改めて考えさせられる作品でした。

『恥辱』のあらすじ

まずは、『恥辱』のあらすじについて

 52歳のケープ・タウン大学教授デイヴィッド・ルーリーは、離婚以来、欲望に関してはうまく処理してきたつもりだった。だが、ひとりの教え子と関係をもった時から事態はすっかり変わった。胸高鳴る日々も束の間、その学生から告発されて辞任に追い込まれてしまったのだ。
 仕事も友人も失ったデヴィッドは、娘がきりもりする片田舎の農場へ転がり込む。誰からも見捨てられた彼を受け入れてくれる娘の温かさ、自立した生き方に触れることで恥辱を忘れ、粉砕されたプライドを繕おうとする。
 だが、ようやく取り戻したかに見えた平穏な日々を突き崩すようなある事件が……。
 転落し、自分の人生を見つめ直すことになった男の審判の日々を描く畢生の問題作。

(引用 Amazon『恥辱』)

簡単にまとめれば、一つの出来事をきっかけに人生のどん底へと突き落とされる52歳のおっさんの話です。

感想

思った以上に読みやすくて、考えさせられる物語は実に面白かったです。

ブッカー賞ということで、正直身構えて読みはじめました。どのくらい難解なんだろうか?どのくらい時間がかかるだろうか?と正直読み始めるのが怖かったです。

ただ、読みはじめてみると思って以上に読みやすく、かつ飲み込みやすい内容でした。一人のおじさんが一時の気の迷いから人生のどん底を味わうといういたってシンプルな設定も、読みやすさの理由かもしれません。

多くの作品はリアリティを描こうとするがあまり、どこかリアリティが欠けることがありますが、この作品については、そのリアリティが上手く表現されていたと思います。物語の中なのに、どこか物語ではなく現実的な部分を感じてしまうところがなんとも面白く、気持ち悪い感じもあるんですが、それもまた面白さを助長していて、全体を通して面白く読む事ができました。

読んでいて、こんなことって誰でもあるよなーと思いました。もちろん、ここまで人生が転落することはなくて、ある程度暗転することは誰にでもあると思います。それは事故かもしれないし、ちょっとした気の迷いかもしれないし、気の弾みかもしれない。そんな些細なことですら、人の人生は暗転してしまう。

ただ、そんなときにどうその暗転した人生と向き合うかが、その人をその人たらしめることなんじゃないかと思います。

この『恥辱』の主人公デイヴィッドは、何かを求めるように娘の住む田舎町に行くんですが、そこでも事件に巻き込まれるんですよね。そして、娘からの信頼、信用も失ってしまい、突き放された感覚に陥ってしまうんです。

これが何を示しているのか?を考える事は正直難しいです。ただ、なんとなく自分の弱みを見せずに、誰かに助けを求めることなんてできないんだろうと思います。「自分は悪くない」「自分はこんなはずじゃない」「自分は強い人間だ」と言っているような人間を助けようと思う人はいません。

人生で転落したときに、一番大切な事は、自分が転落した事を認める事、そしてその事実を受け入れ誰かに助けを求める事なんだと、この小説を通して改めて思いました。

人生は好転する確率よりも、暗転する確率の方が高い。ただ、暗転したからといって人生が終るわけでもなく、そうなってからが本来の人生なのかもしれません。暗転したときに、どういう振舞いをするのか?そこがこの小説で問われていることなんじゃないかとなんとなく感じました。

人生の教訓として読むべき一冊かもしれない

世の中にはありとあらゆる本があります。

人生哲学から、教育論、ビジネス書、歴史書、伝記、漫画、小説、絵本などいろいろな本があります。ただ、どの本にもどこかリアリティが欠けると思っています。もちろん、どの本も役に立たないわけではありません。読み方や読む時期によっては非常に役に立つし、背中を押してくれます。

だけど、どこか自分の人生に寄り添わない感じがしてなりません。

そういう意味では『恥辱』には、リアリティを感じました。どこにでもいるおっさんが、気の迷いで女子大生に手を出してしまった事から、人生が転落し、彷徨うわけです。その生き様には平凡さを感じざるを得ません。そして、誰にでも起こりそうだからこそ、当事者のような気持ちで(気持ち悪い感じはしながらも)読む事ができたんだと思います。

人生の教訓なんて誰から教えてもらう物ではないですが、この本からはそんな人生の教訓のようなものが学べるんじゃないかと思います。ぜひ一度読んでみてください。

あとがき

『恥辱』は非常に奥深く、読み応えのある作品でした。

久々に、いろいろと思考を巡らせながら小説に浸れた気がします。小説を読んでいるとどうしてもその世界に浸ってしまいますが、『恥辱』ではむしろ現実と照らし合わせながら読む事ができたように感じます。「もし自分がこんなことになったら…」と考えながら。

まぁたまにはこうやっていろいろ考える事ができる小説を読むのもいいものですね。疲れますが、読み終わった後に感じる充実感はなんともいいえません。

みなさんもぜひ一度『恥辱』読んでみてください!

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