【感想/直木賞】『流/東山彰良』17歳の少年の人生を描いた圧倒的物語がここにある!

東山彰良さんの『流』は、直木賞を受賞してからずっと読んでみたかった作品でした。

ただ、どこか難しそうで、買ったはいいものの読まずに放置していた作品でありました。その予感は見事に的中し、前半部分はかなり難解で、読みづらく、読み進むことが困難でした。

それでも読み進めていくごとに引き込まれていく物語には、いつまでも余韻に浸っていられるほどの面白さや深さがありました。若いからこそ打ち当たる壁と、年を追うからこそ見える世界を上手く描いた作品のように感じました。

『流』のあらすじ

面白いながらも、難しい内容なので、正直僕にはあらすじとしてまとめることができません(笑)

なので、ここではAmazonから引用させていただきます。

何者でもなかった。ゆえに自由だった――。
1975年、台北。偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。
内戦で敗れ、追われるように台湾に渡った不死身の祖父。なぜ? 誰が?
無軌道に生きる17歳のわたしには、まだその意味はわからなかった。
台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。

1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ!友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。

(引用 Amazon『』)

台湾を舞台に、一人の少年がその祖父の死をきっかけに、台湾の、そして自分の家族の歴史を紐解いていく物語です。

17歳だからこそ見えている世界と、考えが及ばない世界がある。そして、成長するからこそ、年を重ねるからこそ、見えてくる世界があり、目をそらしたくなる世界があるということを、改めて感じさせられた作品でした。

感想

読み応えのある作品でした。

ただ、読みづらかったとも言える作品でした。

個人的に、読みづらかったポイントとして、人の名前が中国語読みだった点が挙げられます。日本歴史を描いた歴史小説ではなく、台湾の歴史を描いた作品だけに、登場人物は台湾人なわけです。

たとえば、どんな名前があるかというと、主人公は葉秋生(イエ チョウシェン)、主人公の悪友が趙戦雄(ジャオ ジャンション)、殺害される祖父は葉尊麟(イエ ヅゥンリン)という感じです。まぁ読めないですよね(笑)各章の最初にはふりがなが振ってあるんですけど、それでも覚えられなくて、僕は記号として読んでいました(笑)

次に、台湾の歴史小説なので、台湾の文化だったり、歴史的背景として当時の日本や中国との関係や台湾の情勢、台湾の経済や政治などについて、知ってないと序盤飲み込めない部分も多く、「???」となりながら読み進めていました。歴史に疎い人間としては、少々難解というか、読み砕く必要もあれば、立ち止まって読み返したりしないと読めかったです。

もちろん、歴史に詳しかったり、台湾や中国のことに詳しい人であれば、比較的読みやすい作品でもあるんだろうなーと思いました。馴染みやすいと言うか。

また、序盤は人間関係やら、主人公「秋生」の生き様、祖父の死や葉一家の歴史についてじっくり書かれているので、かなり読みづらかったですね。歴史小説あるあるなのかわかりませんが、序盤は後半への布石な感じなので、しっかりと頭に入れながら読んだ方がいいとも思いますが。

ただ、読み進めていくと主人公の成長や心境の変化に合わせて、かなり読みやすくなっていくように感じました。序盤が、若い主人公の葛藤やら悩みやらで読みづらいのなら、後半は大人になった主人公の大人の器の大きさというか、おおらかさを表したように読みやすくなったように感じます。表現もどことなく緩くというか、ふんわりした感じになってるんじゃないですかね?(詳しくはわかりませんがw)

一人の少年が、友だちとのいざこざや、幼なじみとの恋、家族とのぶつかり合いや、祖父の死と祖父への想いを通じて、成長していく様は、どこか自分に照らし合わせて読める部分が大きいように感じました。17歳と言うと、進学やら就職やら、家族やら、恋やらでいろいろと悩む時期です。ただ、その部分をすっ飛ばしてしまうとその後の人生が薄っぺらくなるのも事実。その大切な時期に、大切な祖父を亡くすことで、そしてその祖父が変死体として発見されたために、人生を大きく転換させられた秋生少年のその前後での変化は実に面白く、圧倒的でした。

正直、話の内容も素晴らしかったんですが、それ以上に東山さんの言葉の巧みさにも度肝を抜かれた感じがしました。最初は若干「ちょっと難しい表現使い過ぎじゃない?」って思っていました。ただ、その表現が適切だと思うように引き込まれてることも事実で、難しい表現だからこそ、ちょっと特殊な表現を使うからこそ、描ける、描けた作品でもあったんじゃないかと思いました。

圧倒的な物語は内容だけではなく、作者の巧みさも必要

漫画でも、小説でも、絵本でもそうですが、面白い物語に欠かせないのは、間違いなく内容でしょう。

ただ、今回の『流』を読んでわかったんですが、表現が内容を凌駕することもあるんですよね。それは作者の巧みさでもあると思います。巧みさってなんだろう?と考えると、それは作者の人生とも言えると思います。

作者がどんな作品に触れてきたのか?作者が普段何を見て、何を聞いて、何を感じ、何を思うのか?ということが表現と言う形で巧さとして出てくるんじゃないかと思います。

そう考えると芥川賞のような新人賞の作品は、面白いけどどこか薄っぺらさを感じざるを得ないです。薄っぺらいと言うか、奥深さに欠けるという方が適切かもしれませんが。世間的に受けるのは確実に薄っぺらく、誰にでも親しまれる作品だと思っています。ただ、それとは一線を画し、読者を魅了するのは奥深さのある、巧みな作品難じゃないかと思います。

本が売れなくなった時代。本を読まなくなった時代。そんな時代にあって、この『流』が生まれたのは非常に喜ばしく思わざるを得ません。これからもこういった作品に出会えればと思いますね。

あとがき

ちゃんと読み切れてよかったです(笑)

正直、最初は挫折しそうになりました。読みはじめたはいいものの、ちょっと読む時間がなくなって、話が飛ぶんじゃないかと思っていたんですが、意外なもので時間をかけて読んだ作品は忘れないですね。

その甲斐あって、その後はちゃんと読み進むことができ、かつちゃんと読み切ることができました。

400ページを超える作品ですが、最後の方はページ数なんて気にならないくらい引き込まれていきました。ただ、早く読みたいという気持ちもある半面で、「まだ終らないで欲しい」という気持ちもありました。それくらいどこか圧倒された作品でした。

もう少し期間をあけて、もう一度読んでみたいと思います。

1 個のコメント

  • 突然のコメント、失礼いたします。はじめまして。
    書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」を運営しております、和氣と申します。

    貴ブログを拝読し、ぜひ本が好き!にもレビューをご投稿いただきたく、コメントさせていただきました。

    本が好き!:http://www.honzuki.jp/

    こちらのサイトでは、選ばれたレビューアの方が本をもらえるようになる「献本サービス」を行っています。

    1.会員登録 
     こちらのフォームよりご登録ください。
     http://www.honzuki.jp/user/user_entry/add.html
    2.書評投稿
     書籍を検索し【書評を書く】ボタンよりご投稿ください。
    3.ご報告
     貴ブログ名をご記載の上、こちらのフォームよりご報告ください。
     http://www.honzuki.jp/about/inquiries/user/add.html

    名前の通り「本好き」の方がたくさん集まって、活発にレビューを投稿して交流をされているサイトですので、よろしければぜひ一度ご訪問いただけましたら幸いです。

    よろしくお願いいたします。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA


    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください