教養というと、使えない知識、お金にならない知識という印象がありますよね。
でも、逆にすぐに使える知識だからといって価値があるのか?と聞かれると、ドキッとしてしまうのも事実です。すぐに使えるノウハウは、すぐに使えなくなることは世の常。
その点教養はすぐには使えないし、お金に直結はしませんが、どこかでふと使えたり、新しい価値観を考えるときにはかなり使えます。そんな教養の大切さとか重要性を説いてくれるのが、この『池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇』です。
こんなこと書いてます
本の内容をさっくりまとめてみる
目次はこんな感じです。
- 1限目 教養について知っておくべき12の意味。
- 2限目 ニッポンが弱くなったのは、「教養」が足りないからです。
- 3限目 哲学の力で公共事業の問題も解決できるのです。
- 4限目 ニッポンの会社の神さま仏さまとオウム事件と靖國問題と
- 5限目 人間は、「ひと」であるまえに生きものです。
- 修学旅行 アメリカの一流大学は4年間“教養まみれ”でした。
(引用 『池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇』)
本書は、東京工業大学に設立されたリベラルアーツセンターの教授でもある池上彰さんが、同センター長の桑子敏雄さん、同教授の上田紀行さん、東京工業大学の教授であり生物学者である本川達雄さんとの対談形式で綴られていています。
内容は読んでもらうことが一番ですが、主に
なんで今教養が必要なのか?
教養がないとどうなってしまうのか?
教育課程から教養がなくなり日本はどうなっているのか?アメリカとの違いは?
教養をつけることでどう良いことがあるのか?
ということについて話がなされていますね。
感想
どのセクションもかなり読み応えがあって面白かったですが、中でも4限目の「ニッポンの会社の神さま仏さまとオウム事件と靖國問題と」はかなり面白かったです。
というのも、日本人の多くは無宗教だと思っていますよね。僕もそうですが。
でも、そんな日本人にも「会社」という宗教があると、上田教授は言っているんです。なんで会社が宗教なのかと言うと、これまでの会社は年功序列、終身雇用で、社員を見捨てない仕様だからです。つまり、仏教やキリスト教のように人と否定しない、卑下しないのが、日本では会社なんですよね。
ただ、会社が宗教的な役割を担っているが故に、自殺者が増え続けているとも。
この辺の議論はめちゃくちゃ面白かったですね。日本は豊かであるはずなのに、自殺者がかなり多くて疑問だったんですよ。その疑問へが明確になったのもそうですし、日本人にとっての会社の重要性をビシビシと感じた瞬間でもありました。
あと、教養に関して言えば、日本人の教養ななさについて痛感させられました。僕たち日本人は小学生から大学にいたるまで、教養を学ぶ習慣はありません。
では何を学んでいるのか?というと、主にすぐに使える知識です。大学であれば、社会に出たらすぐに使える知識。たとえば、マーケティングや経営学、建築学、法学、教育学、心理学など、大学を出たら即戦力として使える知識を中心に教えているのが、今の日本の教育なんですよね。
別に即戦力なるような知識やスキルが悪いわけではありません。でも、冒頭でも書いた通りすぐに使えるものっていうのは、すぐに使えなくなるんですよね。どの分野にしても、研究は進んでいますし、日々新しい知識や発明があります。なので、大学ですぐに使える知識なんて身につけても、使えるのはせいぜい2〜3年。それ以降は自分で学ばないといけないのが現状なんですよね。
こんな現状で日本が世界の第一線にいられるはずもなくって感じがしました。僕自身、日本が経済大国である必要なんて感じてないので、経済力は落ちても良いんですが、これではただただ惨めな国になるだけです。
上っ面の知識だけの日本人。話していても中身がない日本人。これでは格好がつきません。
これから日本が目指すところは、上っ面の人間を生み出すのではなくて、日本人だからこそできるワビやサビを身につけたり、おもてなしの精神を持つこと。それに加えて、どこにいっても、どの時代でも通用するような教養を身につけた人間を排出することなんじゃないかと思います・
こんな人にオススメ
読んでみて、
- 大学生(特に専門分野に浸っている大学生)
- まだ社会に浸っていない若手社会人
- これから学びを深めるであろう高校生
にはぜひとも読んで欲しいです。そして、これを機にさまざまな教養を身につけて欲しいですね。目の前のテストや仕事をこなすだけの人生ではなくて、自分の人生を充実、世の中を充実させるような人が一人でも増えてくれることを願っています。
僕も負けないように教養を身につけようと思います。
あとがき
教養ってどこまで身につけたら良いのか、何を身につけたら良いのか皆目見当もつきません。でも、それこそが教養の本質であり、教養を身につけるべき理由なんじゃないかとも思います。
何を身につけたらどうなるかわかっている知識やスキルなんてその程度なんですよね。今は使えるかもしれないけど、5年後使える保障もなくって感じです。
時代の移り変わりが激しく、今日の常識が明日の常識ではない今日この頃。これから見つけるべきは、教養なのかもしれません。