【感想/小説】『sex/著者:石田衣良』幻想的なセックスではなく、日常の中にあるセックスを描いた作品

『sex』というタイトルには度肝を抜かれた。

正直ここまでストレートなタイトルも珍しいと思う。ただ、一方でストレートなタイトルが故に、官能小説のような幻想的な内容を感じさせなかったのも事実。

さまざまな本が並ぶ中でこの本にすっと手が伸びたのは、もしかしたらこのタイトル故のことかもしれません。

どこか日常離れした幻想的な官能小説とは違い、ストレートで、ドロドロもせず、どこか日常に寄り添うようなないように仕上げられたのは石田衣良さんならではでした。

各タイトルとあらすじ

好きな人とたくさん――。
夜の街灯の下で。図書館の片隅で。入院中の病室で。異国の地で。最後のデートで。まぶたの裏で、なにものかに祈りながら。性がゆたかに満ちるとき、生は燦然とかがやく。だからセックスは素晴らしい。頭と心と身体が感じる最高の到達点を瑞々しく描いた、すべての男女に贈る感動の12編。

●夜あるく
●文字に溺れて
●蝶をつまむ
●絹婚式
●クレオパトラ
●ソウルの夜
●白い夢
●落葉焚
●最後の滴
●二階の夜
●ダガーナイフ
●純花(すみか)

(引用 Amazon『sex (講談社文庫)』

官能小説と聞くと、どこか幻想的で、非日常的な感じが多い中で、この本に出てくる12の話は、どれも日常にあり得る話ばかりでした。

図書館で若者二人が…、余命幾ばくの男性が病院で…、性に臆病な男性とそれを支える女性…、急な事故でなくなった妻と夢(?)の中で…、生まれて間もなく我が子を失った夫婦…、勃起不全の夫が見た引きこもり息子と妻…などなど人生が人の数だけあるように、セックスにも人の数だけ、いやカップルの数だけ存在している。『sex』はそんなことを上手くストーリー仕立てで、気持ち悪いいやらしさではなく、清々しいいやらしさで描いた作品です。

感想

面白かったというよりも、セックスがしたくなったというのが率直な感想。

この感想は最後のあとがきを読んだときに、「してやられた!」という感想にも変わります。

あとがきにこんな一説が書かれています。

この国がGDPだけじゃなく、生と性のよろこびの豊かさでもトップになれる日を、ぼくは待ち望んでいます。その日を目指して、最後にぼくが考えたセックスのスローガンをひとつ。
「好きな人とたくさん」

(引用『sex』あとがき)

あー、ただ官能させるために書いたわけじゃなかったんだと。石田衣良さんなりに、現在の日本の状況。特に性に対して嫌悪感を抱いている状況をなんとか打破したい。セックスって汚いものでも、忌み嫌うものでもないんだということを伝えたかったんでしょう。

この本が発売されたのは2010年のことですが、現在はより性やセックスに対してあまりいいものではないといイメージが強くなっているように感じます。誰かと付き合うのもめんどくさい、セックスなんてもってのほか。結婚してもお金がかかるから子どもを作らない、子育てがめんどくさい。結婚してからのことは国の問題でもありますが、性に対して、セックスに対して、これほど悲観的、後ろ向きな国も珍しいんじゃないかと思います。

この『sex』では、セックスに飢えているわけではないにしても、どこかセックスを美化して、セックスってただ気持ちがいいだけじゃないよね。そこには性を超えた生を感じさせるものがあるよね。ということを伝えているように感じました。

セックスは汚いものでもないし、恥ずかしいことでもない。もっと根源的な、人としての喜びを感じるためのものなんじゃないかってことを改めて教えられて気がします。

僕自身遠距離恋愛中で長らくセックスはしていませんが、早く彼女に会いたい。彼女とセックスがしたいと思いました。僕は風俗がダメともいわないし、不倫は責任を負う覚悟があるならそこまで責めるつもりもないですが、どうせセックスをするなら好きな人とするべきなんじゃないかって思います。もしそういう人がいないなら、探す努力をした方がいいんじゃないかとさえ思います。

天涯孤独もいいでしょう。別に悪いことだとは思わない。でも、それでもセックスの喜びや愛しさを感じて欲しいと思います。

(自分でも何言ってるのかわからなくなったのでこの辺でおしまいw)

この本をたくさんの人に読んで欲しい

恋愛に奥手の人が増える。初体験の年齢が年々遅くなる。セックスレスの夫婦が増える。風俗だけにいく人が増える。

日本はいつからこんなにも性に対して臆病になったんだろう?いつからセックスが忌み嫌う対象になったんだろう?

もちろんなんでもかんでもセックスをすれば良いというわけではない。でも、好きな人とセックスをしたいという気持ちが薄れたら結構ヤバいんじゃないかと思います。それ以外でも愛情表現はできる。たしかにできる。でも、それで本当に満足できるんだろうか?自分だけじゃない、相手も。

ぜひ、セックスに、性に臆病になっている人には読んで欲しい。もちろん性に対してどん欲な人にも読んで欲しい。

石田衣良さんのセックススローガン「好きな人とたくさん」は、これからの日本にとって必要なことを提唱している一つの言葉なんじゃないかと思います。

あとがき

セックスと聞いて何を思い浮かべるだろうか?そして何を考えるだろうか?

好きな人の顔?それとも風俗街だろうか?それでもなくただ忌み嫌うもの、汚らわしいものの一つとして感じ取るだろうか?もしかしたら、生きていくためには欠かせないものと答える人がいるかもしれない。

こんな質問に明確な回答なんてないですし、あっても困る。

ただ、勘違いして欲しくないのは、セックスは決して汚らわしいものでもなければ、忌み嫌われるような行為でもない。もちろん痴漢や強姦のような行為は許されないし、許可のない(相手が嫌がる)アダルトビデオのような類いも好ましくない。

でも、好きな人と純粋に体を交わらせるセックスはいいものだと思う。もっと純粋にセックスを楽しめる人が増えて欲しい。それも好きな人との。そうすれば、日本の出生率の低下や少子化問題は解消させるのではないかと思っています(笑)

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