【感想/吃音】『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』誰しもコンプレックスを抱えている。それを笑ってはいけない。

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」というタイトルで、内容を思い浮かぶ人は、吃音症であるか、吃音症の子どもや友だち、同僚を知っている人だと思います。

かく言う僕は吃音症で悩んでいる一人です。

この漫画が伝えたかったことは、「吃音症を持っていることを障がいと認めてくれ」とか「吃音症の自分にどうじょうしてくれ」というわけではないと思います。誰しも何かしらコンプレックスを抱えています。それをどう受け止めていくのか?どう乗り越えていくのか?ということを吃音症と言う、著者自身が抱えるコンプレックスから伝えたかったんだと思います。

あらすじ

衝撃的なはじまり方でした…。

高校に入学した志乃ちゃん。彼女が入学時に一番心配していたのは、「自己紹介が上手くできるのかどうか…?」しかし、結果は…。

自己紹介が上手くいかなかった志乃ちゃんのことを笑う周りの生徒、そして、「緊張しなくて良いんだよ」と教える担任教師。もちろん、そんなことで良くなるわけもなく…。

そんな彼女の前に現れたのは、同じクラスの加代ちゃん。二人は音楽を通じて、仲を深めていく。しかし、そこに割って入ろうとする一人の男子生徒・菊地。彼はかつて志乃の自己紹介のマネをして、バカにしていた…。

志乃、加代、菊地の三人は文化祭のために音楽の練習をするが、志乃ちゃんは声が出なくなる…。文化祭はどうなるのか?そして、三人の関係はどうなるのか…?

吃音症について

この漫画の主人公・大島志乃は、吃音症と言う言葉がスムーズに出てこない障がい?病気?を抱えています。(“?”をつけたのは、依然として原因や治療法は見つかっておらず、障がいとも病気とも認識しづらいためです)

かく言う僕も吃音症を持つ一人です。吃音症の症状には、以下の三つのように分類することができます。

連声(同じ言葉が何度も繰り返してしまう)
←「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ありがとうございます」という感じ。

伸発(言葉を伸ばしてしまう)
←「あーーーーーーーー、ありがとうございます」という感じ。

難発(そもそも言葉が出てこない)
←「あ、、、、、、ありがとうございます」という感じ。最悪まったく出てこないこともあります。

どの症状があるから軽度、重度ということが決まるわけではありません。そして、人によっても、症状の出方は違いますし、言葉によっても出やすい言葉、出にくい言葉は違います。なので、一口に吃音症といっても、差があるということを認識しておく必要があると思います。

この漫画が伝えたかったことの本質を考えてみる

この漫画は、吃音症がテーマのように感じますが、実際は吃音は一つのファクターであって、テーマと言う大きな枠組みではないと思います。

では何がテーマなのか?

僕は、コンプレックスだと思います。この漫画でいえば、志乃は吃音症、加代は音痴、菊地は他人の気持ちがわからない?という感じでしょう。

コンプレックスを抱える三人が、三人ともそのコンプレックスを隠していて、コンプレックスで生き辛さを感じている。でも、そのコンプレックスをどうにか乗り越えたくて、もがき、苦しみ、コンプレックスを受け入れていくまでを上手く描いていると思います。

コンプレックスを乗り越えることは、決して一人ではできない。一人ではできないからこそ、誰かと協力して埋め合わせをする。そのとき、大切なのは相手のコンプレックスも受け入れるということ。相手ができなくても笑わない。そんなコンプレックスとの付き合い方、乗り越え方をテーマにした作品だと思います。

この漫画を読んで思ったこと

吃音症を持つ僕としては、この漫画は吃音症を強調し過ぎているとは思いません。これくらいの症状を持つ人は結構いると思います。ですが、この漫画を読んで「吃音症の人って辛そう…」「吃音症の人って可哀想…」とは思って欲しくないですね。

というのも、吃音症はあくまで一つの症状であって、それ以上でもそれ以外でもありません。それを周りからとやかく言われたくないというのが、個人的な見解です。周りから「辛そう…」とか思われることは、その症状をより悪化させるだけだと思います。

それよりも「こんな人もいるんだ」「吃音症っていうのはこういうことなのか」「名前が言いづいんだね」「母音が言いづらいんだね」って認識しておいてほしいという感じです。

あとがき

この「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」に限らず、吃音を扱った作品は近年増えてきています。「英国王のスピーチ」や「ラブソング」など映像かもされてきています。それほど吃音症の人が増えてきている、または問題になっているということだと思います。

この漫画をきっかけに少しでも多くの方に、吃音症っていうものが認知されればと思います。