【感想/小説】『その時までサヨナラ』ホラー作家が描く感動のストーリー

普段姉から本を薦められることなんてなかったので、突然「この本は面白かったよ」と渡されたときは少々驚きました。

しかも、その本が「リアル鬼ごっこ」や「×ゲーム」「スイッチを押すとき」などのホラー系小説家の山田悠介が描く感動ミステリーだったので、またまた驚きました。

帯にも「最後には涙なくてしては…」的なこと(うろ覚えw)が書いてあったんですが、これまたいい作品だったんですよね。(泣いたとは言ってない)内容はこれまでの山田悠介の作品とは違うんですが、やっぱり文体というか、書き方や構成には山田悠介らしさもある作品のように感じました。

ということで、適当な感想文をどうぞ。

あらすじ

別居中の妻子が、旅先で列車事故に遭遇した。仕事のことしか頭にない悟は、奇跡的に生還した息子を義理の両親に引き取らせようとする。ところが、亡き妻の親友という謎の女の登場で、事態は思いもかけない展開を見せ始めた。はたして彼女は何者なのか。そして事故現場から見つかった結婚指輪に、妻が託した想いとは? ホラーの鬼才が切り拓く愛と絆の感動ミステリー!

(引用 Amazon『その時までサヨナラ』)

亡き妻の親友として現れた女性は、一体何ものなのか?そして、なぜ彼女は悟の前に現れたのか?

妻を失くし、息子とともに人生を歩むことを決意した悟の心の変化を上手く描いたストーリー。ラストには、タイトル「その時までサヨナラ」の意味が明らかになります。

感想

ガァーーーーと引き込まれて一気に読めるいい作品でした。

冒頭のギスギスした人間関係から一転、中盤のモヤモヤした心理状態、後半に向けてすべて明らかになる感じのストーリー構成は、山田悠介らしい作品だった気がします。

死んだ人間と残された人間を繋ぐ作品というのは、どうしても数時間や一日の再会が多いように感じますが、この作品は実に一ヶ月もの間、死者と生者を繋げているところが少々斬新でした。それも、他者の体を媒介にして繋げているというのも面白かったです。

突然の死というのは、死者にとっても生者にとっても辛いものがありますよね。特に死者は伝えたかった想いを伝えられずに死んでしまうことが多いと思います。病気と違い、死を予測できないからこそ、突然の死は辛く悲しい。

ただ、突然だからこそ、辛さや悲しさが大きいからこそ、残された人間は、その死から何かを得て、乗り越え生きていかなければならないんですよね。

今回で言えば、息子と一緒に暮らそうとしない悟が、亡き妻の親友なる女性からの助言やら手伝いやらで、息子と暮らしていくことを決意し、そのために必要なことを身につけていくわけです。最初は、「祖父母に預ければそれでいいや!」と投げやりだったはずなのに、亡き妻の想いが伝わり心を入れ替えるわけですよね。

残された者が、何でどう心を入れ替え、前に進んでいくようになるのかはその人自身の問題ですが、一つだけわかるのは、残された者は、死者のことを引きずらないということだと思います。たとえば、今回の作品で言えば「妻がいれば…」「妻の両親と仲が良ければ…」と、ないものねだりをするのではなくて、今自分には何が残されているのか?をしっかりと考えることができる必要があると思うんですよね。

悟は、求めていた職には就くことができなかったですが、息子がいることの幸せに気づいたからこそ、心を入れ替え、妻の死を乗り越えられたんだと思います。

また、もう一つ考えたことがあります。それは夫婦間の意思疎通の難しさです。

悟は、奥さんが死ぬまで奥さんと意思が通じてなかったんですよね。だから、別居をしていたわけですし、離婚まで考えていた。でも、奥さんが死んでから、親友という人が現れて、奥さんがなぜ福島まで行っていたのか?を知ってから、奥さんの考えていたことを理解するわけですよ。

人間誰しも相手のことを完璧に理解することなんてできません。でも、理解するための方法としてコミュニケーションがあるわけですよね。ちゃんと自分の想いを言葉にする。これが誰かのことを理解するためには一番の方法なんだろうと思います。「死んだからこそ話せる」では、遅いんだよな…ということをこの作品では思い知らされました。

映画化もされている模様

Amazonからあらすじを引用させてもらっているんですが、その際にこの作品が映画化されている事を知りました(笑)

キャストは思っていた感じとは違いますが、まぁこれもありだよね!という感じで納得できました。気になる方は、ぜひ映画の方もご覧ください。

あとがき

他人を変えるというのは正直難しい。そんなことを思っているわけですが、死を扱っている小説を読んでみて思うのは、誰かの死は人を変えるということでした。

生きている人が生きている人を変えることは難しいのに、誰かの死は誰かの気持ちや行動、言動を変えるというのは、なんとも皮肉なことですよね。でも、それが事実。特にその死が、大切な人の死の場合だと影響力は計り知れない。

もちろん、その死の直後は立ち直れないかもしれません。それでも、月日を経て、確実にその人の死は、誰かを強くするし、誰かを変える。生きていないと何もできないなんて思っていたけど、こうやって考えてみると死ぬからこそできることもあるんだなーと改めて感じます。まぁ生きてるに越したことはないんでしょうけど、死にそれほど悲観しなくなるいいきっかけになりました。

人の死はたしかに悲しい。でも、それは誰にでも訪れる当然の出来事。だからこそ、その死をどう受けとめるのか?どう乗り越えるのか?ってことで、その人の人生は変わるんだろうと思います。

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